波乱の春

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覚悟を決めて、俺は無理やり笑みを浮かべてみせる。 『ワー、理事長って素敵ー。プレゼントって何デスカー』 「おい…如月…棒読みすぎないか」 『黙ってろ長内』 こうゆーのほんと向いてない。優等生の演技をしていた頃は平気だったんだけれど。いや、この今は相手がこのショタ理事長ってことも関係しているか。 長内が真面目に突っ込みを入れるほど、心のこもらない台詞だったにもかかわらず、ショタは満足気ににこにこと笑っていた。そして小さな顔に見合った、まだ幼い感じの口を開く。 「ふふふー教えてほしいー?」 『ええ、ぜひ』 「それはねぇ…じゃんっ!」 『…?』 俺と長内は揃って首を傾げた。突然飛び跳ねたショタ理事長が、勢いよく両手を頭上にあげて、奇妙なポーズをとったからだ。 なんだこれ?…A?きょとんとしている俺たちを見て楽しそうにくすくすと理事長が声を上げる。 「静。君には今年度からここへ行ってもらうことにした。それが僕からのプレゼントだよ」 「っ、理事長、まさか…!いけません、そんな」 「長内くん、君だってこの学園のカースト制は理解してるはずだよ。無いとは思うけど、これから先、静と生徒会役員が同じSクラスにいることに何らかの感情を抱く者がいないとも限らない、でしょ?」 「っ、如月は今や生徒会役員を遥かに凌ぐ人気を持っています。悪意を持たれるなど、ありえない。役員でなくなったとはいえS組ではなくなれば、逆に危険です」 俺を差し置いて、どんどん進んでいく口撃戦に苦笑いを浮かべる。どこまでも真面目で俺を庇おうとする長内と、そんな長内の主張をのらりくらりと躱すショタ。 この人相手に口論で勝とうとするなんて不可能だ。長内が、俺のためにそんな頑張る必要なんてないのに。それに俺は、 『ありがとうございます、理事長』 とても嬉しいんだから。
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