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そんな、動揺を隠すように彼から顔をそらす。
貴方の綺麗な顔は、きっと苦労なんて知らないでしょう。
「何で私なんかにかまうんですか。いい加減ほっといてよ。あなたには私が死のうと関係ないでしょう!」
静かだった草原に私の声だけがこだまします。
あなたも、きっと前の私と同じ"優しい人"になりたがっている、エセにすぎない。
見返りを求める優しさなんていりません。
顔を反らしていて顔は見えませんが、きっと貴方は面倒くさそうな顔をしているでしょう。
すると、パァンと言う音と共に顔に痛みが走る。
「うるせー、バカ野郎」
おそらく、私の頬を叩いた手で今度は私の頬をグイッと掴み、強制的に彼の方を向かされます。
ほっぺがヒリヒリします……多分、初めて男の人に全力で張り手をされました。
痛いです……
「いいか、よく聞きな……死に急ぎ野郎」
怖いほどのまっすぐな彼の瞳。真剣な顔から逃げられません。
「世の中には、生きたくても生きれねー奴が山ほどいるんだぞ。いらねー命ならそいつらにでもくれてやれ!」
「…………」
ありきたりの、言葉……全然心に響きなんてはしません。
ですが……
彼の綺麗な黒の瞳からは一滴、二滴と涙がこぼれおちます。
「……」
男の人が泣くの初めて見ました。
まるで、美しい絵画でも見ているようです……男の人の涙ってこんなにも、美しいものなのでしょうか?
「……何で……泣いてひるんでふか?」
そして、手を頬から離して下さい。話ずらいです。
「…………お前のために、泣いているんだよ。有りがたく思えよ!」
「あ……はい」
その黒い瞳に、涙をいっぱい溜めた目で睨まれると失礼ながらドキッとしてしまいます。
「いいか……だから、そいつらに恥じないように生きて、それから死ね」
痛いぐらいの眼差し。
目がそらせません……頬を掴まれているのもあるのでしょうが、彼から目が離せなくなっていました。
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