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5年前……
サヤサヤと葉が風で揺れて小さな音を奏で、穏やかな時間が過ぎます。
もう、自殺は諦めました。
でも……
彼はずっと傍で手を繋いでいてくれました。
沈みつつある夕日。辺りはすっかりオレンジ色に染まり暗くなりつつあります。
帰らないのでしょうか。
あ、目……涙で赤くなってます。
せっかく綺麗なお顔なのにもったいないです……私が泣かせたんだと思うと。
土下座して謝りたくなりますね。
夕日に照らされる彼の顔は、本当に絵から飛び出てきた王子さまのようです。
切れ長でもほどよい大きさの黒い瞳に、まっすぐで艶のある黒い髪。鼻の配置や口の形まで完璧なんて羨ましいです。
「……なんだ、ずっと俺の顔見て」
「えっ……」
「そんだけ、舐めるように見てたら気付くだろ」
な、舐めるように……私、そんなに見惚れていたのでしょうか…………恥ずかしいです。
恥ずかしくて汗が……手をまだ繋いでいるというのに
「あ、あの!
帰らなくていいんですか? 私ならもう大丈夫ですし」
彼の顔をみれなくなるのは名残惜しいですが、手汗を王子に知られたくありませんし……そろそろお帰り願いたいです。
「気にしないでいいよ。帰っても誰もいないし」
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