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医薬品臭い病院の一室。
外では蝉が騒がしく鳴いていて、夏の始まりを告げると共に、この部屋の静けさが際立つ重苦しい空気。
こう言う空気……大嫌いだ。
高校三年の夏、俺は医科大学付属の病院の神経内科にいた。
正直、訳が解らない。隣には、三つ下の妹。
最初……こいつが最近腕が挙げずらいとか言うから市内の病院に行ったところ。もっと精密な検査の受けれるこの病院を勧められのだ。
『もっと詳しく調べられる病院に紹介状を書きますので、一度ご両親と一緒に診てもらって下さい』
そんな、医者の言葉が不安を仰ぐ。
こんな大きな病院を勧められたと言うことは………なんて、嫌な予感しかないわけで。
呼吸だってちゃんと、できているか解らないぐらい、不安で、恐怖に押し潰されそうだ。
ただの付き添いの俺がこんなになっているんだ。
本人はもっと不安なはずだ。
当の妹だって、ただの筋肉痛か何かだとしか思っていなかったようでまさか、こんなことになるなんて夢にも思っていなかっただろう……
大丈夫。
そう言ってやりたいけど……そんな気休めで逆にコイツを不安にしてしまうのかもしれない。
かえって、意識させてしまうのではないだろうか。
そんなことが、頭の中でぐちゃぐちゃになっていって
こんな時、兄貴って何を言うんだろ。
いつもは、うるさいくらい明るくて風邪なんて滅多に引かない馬鹿丈夫な妹が、カタカタと震えて。
こんなに、小さくて弱々しいなんて。
知りたくなかった。
そんなことを悶々と考えていると、四十代前半の男が目の前の椅子に腰を下ろした。
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