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医者はまだ何となく若いのに気取らない感じの印象。だらしのない寝癖だらけの黒髪に、やる気なさげの瞳。
ヨレヨレになった白衣。
大丈夫何だろうかこの人……
医科大学の先生ってこんなに若いのか。
ここを紹介した市の病院の先生の方が、はるかに貫禄があって偉そうだ。
何か……この人は、
"近所の兄ちゃん"
って感じで、全然緊張感がない。
「……っ!」
「……お兄さんですか?」
長く見すぎたせいか、彼と目が合う。
気だるそうなあきらかな愛想笑いを浮かべて俺の方を向く。
「ご両親の方も同伴でお話をしたいと、言ったはずですが」
「俺じゃ、ダメですか?」
「いえ、駄目と言うことは……いや、駄目ですね」
やる気の無い話し方。
いいのか、ダメなのかどっちなんだよ。
緊張感のないやつ。
コイツ本当に大丈夫なんだろうな。
しばらく、うーんと考えると「ま、いいでしょう」と、言った。
何か信用できねーな……ただただヤブでないことを祈る。
「えーと……夜久命(ヤク ミコト)さんと、そのお兄さんの貴史(タカフミ)さん……」
カルテを片手に妹のレントゲン写真らしきものを後ろに貼っている。
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