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センセイは、小さくため息をつく。
「簡単に言うと……ミコトさんの体は徐々に動かなくなったり、筋肉が衰えてきたりします。そして、今の医学では治療法が見つかっていません」
いくら俺がバカでもここまで噛み砕かれるとさすがに分かる。
「長くこの病気と付き合っていくことになります」
センセイの口調は変わらず穏やかで、淡々としているからなんだか、まだどうにかなるんじゃないかなんて思ってる。
「長くというと……どれぐらい」
「ミコトさんが、死ぬまで……ですね」
…………死ぬまで。
「失礼……言葉がすぎましたね。今は腕だけですが、徐々に全身が動かなくなっていきます。そして、その順番は私達医者にも予想がつきません。足かもしれませんし、逆の腕かもしれない」
隣で今、座っているコイツの体が……しかも、治療法が無いって。
それじゃあ、コイツは……
「そして、最終的には肺の筋肉が麻痺し、死にいたります。そう言う意味での死ぬまでです」
そう言う意味でのって……いや、結局。
「センセイ、コイツの……ミコトの命はどのぐらいなんですか?」
震え混じりでちゃんと、センセイに届いているか分かんないけど……死ぬの?
「……早くて三年で、呼吸障害がおこるかと」
死ぬ?
そりゃ、人間いつか死ぬけど。
コイツはまだ、
まだ……中学三年だぞ。
15の女の子だよ。
震えが止まらない。
ミコトは、気分が悪くなり部屋から出ていった。
「確かに、15歳の子供には酷な話かもしれませんね」
相も変わらず、淡々としている。
この人には、血がかよっていないのか……人の死をこうも、簡単に。
「生きるためには人工呼吸器を装着する必要があります。装着しなかった場合で三年という意味で、装着した場合……およそ十年以上の延命が可能です」
「そう言うことを聞いているんじゃないんですっ!」
静かな病院の一室に声が響きわたる。
そう言うことを聞いているんじゃないんだ……気休めの言葉なんて。
俺が聞きたいのは……
「ミコトは………妹は病気で死ぬんですか?」
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