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高校三年の夏……いい人になることに疲れました。
今ではあの時なぜあんなことをしようとしたのかも解りません。
静かな昼下がり。
大きな木下で私は何度目かの自殺を図っていました。
手首は傷だらけで見れたものではありません。
夏だというのに傷を隠すためいつも長袖で。
お医者さんによれば傷跡はもうきえないそうです。
人生を狂わすイジメ。
私は闘おうと決意しました。
でも、手に取った武器は刃物や鈍器と言った人を傷つけるものではなく、
自殺という、精神的に苦しめるための武器だった。
どれくらい、殺傷能力があるのか解らない無知の武器。
私が死ぬことが大前提の武器です。
『お前の声、気持ちわり……それで声優とか』
『人を不快にさせる音出さないでくれる。アイツと同じクラスとか俺ら可哀想すぎじゃね……マジで死のうかな』
『アイツ本当に女? 何かくせーんだけど』
『お前、最悪じゃん! アイツと席隣とか、一日中アイツの口臭 嗅ぐとかオエー!』
『死ねる勇気もないのに』
そうですよね
手首なんてまどろっこしいことなんてしないで
ノドをかっ切れば……
「おいっ、なにやってんだ!」
男の人の声と共に手に持っていたカッターが遠くへ飛ばされてしまいました。
その声の男の人は、私と同じぐらいの年でとても綺麗な黒髪の青年でした。
白いシャツに黒い制服のズボン。
あなたも、苦労なんて知らないんでしょうね。
「放っておいて下さい」
「うるさい、お前 家どこだ。おくってやる」
そう言って黒髪の青年は私に手を伸ばします。
そんな気休めな救いの手なんていりません。
パァンと、皮膚と皮膚のぶつかりあうおと。
私が彼の手をなぎ払いました。
「何も知らないくせに……ここで死なせて下さい。私は死にたいんです」
徐々に涙で目の前の彼の顔が見えなくなります。
別に泣きたい訳じゃないのに涙が止まりません。
私は……どうやったら楽になれるのでしょうか。
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