ページ0 CV:泉日和 イズミヒヨリ

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慰めるでもなく、気休めを言うでもなく、ただ私の目の前に突っ立ているだけの青年。 すると、彼の口がわずかに動きました。 「死んで逃げようとするなんて、卑怯だからな」 低く、とても怖い声。 風で彼の黒い髪がゆらゆらと揺れていて、静かな時間が過ぎていきます。 私は何も言えませんでした。 "卑怯"確かにそうかもしれません。 私が死ぬことによって、イジメから自動的に解放される…… それどころか、あわよくばイジメの首謀者が苦しめばいいと思っていました。 卑怯という言葉に心痛める私は、やはりまだ優しい人になりたがっているようですね。でも、やっぱりこの人生を終わらせるには死ぬ以外考えられないんです。 「ここで、死なせてください」 家に帰ればまた、親に学校に行かないのかと攻め立てられる、そんなことも、もう嫌なんです。 限界です。 彼にとられたカッターを再び奪いに手を伸ばす。 まぁ、座り込んでいる私が立っていて背も高い彼の手にあるカッターに届くはずもなく私はただただ手を伸ばすばかりです。 立てばいいのも解ってはいるんですが、どうも足には力がはいりません。 まぁ、立ったところで身長の差はかなりあるわけで、結局何も変わりはしません。 地べたを這いずる私を冷たい黒い瞳が見ている。 ああ……私の人生はずっと誰かに見下げられる人生だったな。 イジメられる前も……後も。 だから、優しい人になって誰かに感謝してほしかった……なのに、何でこんなことに。 「死なせてください。お願いします!」 もう見上げるのにも疲れて見上げるのもやめる。 目を開けると地面しか見えませんでした。 「人に……見下される人生は、もう嫌なんです」 そう、もう嫌だったんです。 あがくのも、何もかも……私はもしかしたら、イジメがなくったとしても自殺を図っていたのかもしれません。 私は生きてる価値がみいだせなかったんです。 代わり映えのしない人生に飽きたのかもしれません。 「死んでもなんも変わんねーぞ」 低い彼の声がすぐ近くで聞こえました。耳に彼の吐息がかかります。 彼は膝を地面につけていて、顔を上げると私と目線がほとんど変わりません。 すごく近くにある男の子の顔は、モデルさんの様に整っていてまるでお人形さんみたいな顔。 鋭くまっすぐな瞳に思わず顔が赤くなってしまいます。
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