苺大福

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でも。もともと頭の回転が、誰も遊びにこない遊園地の壊れかけの観覧車みたいに、ゆっくりな私は。 「大丈夫だって」 これしか言えなかった。我ながら、情けないと思う。 「もう決まったことよ。明日からそっちのお家に帰るのよ」 さらり、と。お母さんが言った言葉に絶句する。 「…あ、明日からぁ!?」 あぁ。もう、お味噌汁冷めちゃってるだろうな。でも、今はそれより大変なことがある。 「ごめんね。でも安心して、苺。そのお家には、あなたと同じ高校のお子さんがいるのよ」 …もう。嫌だ。何もかもが嫌になってきた。冷たいお味噌汁のじゃがいもを、お箸で刺す。いつもなら。お行儀が悪いって怒られるだろう。でも、今はそんなこと誰も気にしてない。
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