第二話 はからざる。

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真っ新な青い空。 雲一つない今日は、まさに快晴というに相応しいだろう。 文句ない仕事日和な日なわけだ。 「ええと。今日の配達はっと」 飛脚屋の仕事はまず、自宅の文受けの確認から始まる。 家自体が森なのでぶっちゃけここにはあまり投函されない。 配達途中に頼まれることのほうが圧倒的に多い。 まあ、その方がいろんな人とお話できるし全然構わないのだけれど。 数枚の文を箱に入れ、三尺棒に固定して担ぎ上げる。 高揚してきた気分のまま、懐から地図を取り出す。 毎回の配達を効率的に、そして迅速に手紙を届けるための自作の地図だ。 この集落に住む人の自宅やお店から、急勾配や近道なども記されている。 「よっし。がーんばーるぞー!」 「毎度! ご利用ありがとうございまーす」 五件目である家の戸を閉めると、すぐに次の配達先へ急ぐ。 右足と右手、左足と左手を同時に出し肩で風を切るよう走る。正直走るというより早歩きの方が近いのだが、何はともあれ飛脚にとってはこれ以上ないフォームなのだ。 ふと、空を見上げる。 予想より太陽が上がっていた事に少しだけ眉を潜める。 ーーーやば。思ったより時間かかってる。
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