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大浴場を出た優は そのまま、同じ一階にある『団らんの間』まで歩いて行った。
濡れた髪をバスタオルで拭きながら、自販機の前で足を止める。自販機は二つ並んでおり、一つは飲み物専用、もう一つはアイスクリーム専用だった。
「…さて、と。」
「あっ!優!」
その声に振り返ると、奈央子が立っていた。
同じく階段を下りて来た様で、バスタオルを肩にかけ、部屋着を着ている。
彼女は優の真横に並んで立って、一緒に自販機の方を向いた。
「私も、何か買おうと思って」
しかし奈央子がよく自販機を見る前に、優は奈央子の背後に ちょっと回って、まだ湿っぽさが残る彼女の肩を後ろから両手で抱き締めた。
「…!?わ わっ…」
…ほんのり、甘い香り。
大浴場と同じ、桃の甘い香りだ。
優は 何だか、奈央子と一緒に風呂に入って来た様な、破廉恥な気持ちになった。
臭覚というものは実に不思議である。
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