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無言で抱きしめ続ける優に、当然パニックになっていた奈央子だが、小銭を入れようとしていた手を直ぐに止めて、その場でじっと堪(た)えた。
いつも、優の身体と奈央子の身体の間には、クッションの如く”お邪魔虫”が多い。
奈央子の長い髪の毛と、さらにバスタオルと厚めの部屋着が、二人の”熱”をお互い感じにくくする。
だけど火照ってしまうのは、風呂上がりの体同士のせいじゃないと奈央子は思った。
「あ゛ー…。甘い」
「え?え?」
「腹いっぱいになった」
「優、何…食べたの?」
「食ってねぇよ。でも食わなくても、満腹感になったって言いてぇの」
お風呂上がりの時よりも熱くなった奈央子を放し、優はアイスの自販機に小銭を入れた。
「でも結局 買うんじゃん!」
小銭を入れる優を見た奈央子が叫んだ。
「優、何か食べたいものがあるの?」
「…おまえ」
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