II

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あの時…… もっと詳しく検査を受けておけばよかったのか 今もわからない。 逃げ場が欲しくて、言い訳が欲しくて 病院に、行ったけど 検査して、答えが出るのが怖くなった。 病名によっては、手帳も貰える。 そしたら 職業訓練校なんかも優先的に行けるし 仕事も斡旋して貰える。 そう先生は言った。 特別になる事が 怖かった。 そう言う目で見られる事になる。 でも…… 私はずっと気付かずに生きてきた。 違う! 生きてこれたんだ。 まだ大丈夫! 本当に困ったら検査を受ければいい。 先生に頭を下げて 逃げるように病院を出た。 まだ大丈夫! 今まで仕事だって、ちゃんと出来てた。 少しミスが多いだけで…… だから……大丈夫…… 何度もそう繰り返して自分を落ち着かす。 人目も気にせず あの日 泣きながら街を歩いた。 停車駅を知らせる車内のアナウンスに 私は我に返って立ち上がる。 電車を飛び降りて また大きな息を吐いた。 私に出来る仕事、 きっと見つかるはず。 転職しなきゃ。 本当はもう、新しい仕事を見つける意欲もなくて、 誰にも関わらないで家にいたかった。 そんな事、出来る訳もなくて 私は頭を振ると 重い足を引きずるように 前に出した。
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