II

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人気のない静かな通り 歩き慣れた道とはいえ やっぱり怖い。 街灯の灯りを頼りに早足で歩く。 右手にある高い塀はこの辺りでも有名な総合病院。 左手には近代的な病院とは対照的な 古い民家が並ぶ。 私は街灯の灯りに追い立てられるように 早足で歩いた。 やっぱり 実家に帰ればよかった。 一人暮らしを始めて もう半年がたつ。 いくつになっても結婚をしない私を 急かす父に嫌気がさして 家を出た。 上げ膳据え膳の 快適な実家が懐かしい。 でも、なにより アパートで過ごす一人きりの夜が怖かった。 特に こんな夜は余計に怖い。 一昨日のトモ君を思い出して また怒りが込み上げる。 これでよかったんだ。 1人に慣れなきゃ。 もう1度そう、言い聞かせて 歩きだす。 ふと…… 背後に 誰かいる気がして 全身を耳にして 気配を伺った。 昨夜の事があったせいで、 神経質になってるんだ。 タクシーが見つからない人が 私の後ろを歩いてるだけ。 私と一緒 でも…… なんだか振り向くのが怖かった。 こんな夜中。 人が誰もいないのも怖いけど 知らない人が後ろを歩いてくるのも怖い。 恐がりすぎ…… 昨日のせいで、臆病になってるだけ。 私は深く息を吐き、 自分に言い聞かせながら 少し早足で歩いた。
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