III

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美波?」 八重は、もう一度ドアの前で声をかけてから ノブを回して美波の部屋を覗き込む。 誰もいない。 随分久しぶりに、美波の部屋に入った。 窓にかかる、ピンクのカーテンが風に吹かれ ふわりと揺れた。 小さな頃から綺麗好きの美波。 美波がまだ小学校の頃 一緒に買い物に付いてくる度に、 ねだられて買った少女漫画が、 本棚に順番どおりに綺麗に並んでいる。 机の上には 物一つ置かれていない。 小さなソファーとテーブルの前に置かれたテレビの横に、 ゲームのカセットが立てかけてある。 八重はカセットを手に取り 深いため息をついた。
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