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耳元でけたたましく鳴り響くベルの音により、俺の目は覚まされる。
ベッドの横に置かれた木調の棚に手を伸ばし、目覚まし時計のスイッチを切った。
カーテンの方に顔を少し捻ると、眩しい朝の白い光が隙間から射し込んでいる。
少し硬めのベッドから腰を離してカーテンを開くと、花弁を散らし始めた桜の木が目に留まった。
「咲くのも早いけど、散るのも一瞬だな……」
季節が移り替わる儚さを口に出した俺は、スリッパを履き寝室から出て行った。
1階から漂ってくるトーストの香ばしい匂い。
その香りと共に、包丁が一定のリズムでまな板に落ちる音が聞こえてくる。
廊下を曲がり、階段を降りてキッチンの扉を開けると、花柄のエプロンを付けた妻の背中が目に入った。
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