ラスティ・ネイル

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「海外の……あいつのとこに行ったんだ。……でもせめて、さよならくらい、言ってほしかった。 あのひとにとって俺は、さよならを言う価値もなかったのに……それなのに」 彼は私がまるでその女だというかのように、きつい目を向けた。 「それなのに……俺だけはまだ……こんなにつらいんだ」 自分を(さげす)むようにそう呟いた彼は、まるで傷ついた小さな生き物のように見える。 私は年上の女として、彼を慰める義務がある。 なんとなくそんな気がして、少しだけ笑えた。
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