ラスティ・ネイル

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「……あのひとは、来た?」 彼は、少しだけ微笑んで首を振った。 「いいえ、一度も」 やっぱりね、と呟いた私を神谷君はえ?というような顔で見た。 私はひとくち、グラスのお酒を口に含む。 「ふられたの」 思っていたよりすらりと、その言葉はこぼれた。 二人で来ていたこの店に、きっと彼は現れない。 もしかしたら私と出くわすような危険を、あえて冒すようなひとではなかった。
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