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けれど最初の夜が明けると不安になった。
彼のなすがまま身体を許してしまったけれど、自分は手軽なお遊びで、そのうち捨てられるのかもしれない、と。
でも意外にも寧史は誠実で、きちんと私を恋人として扱ってくれた。
彼はかなりの野心家だ。
よく“俺は将来社長になってやる”と冗談半分に言っていて、ビッグマウスのその言葉通り、常にガツガツと上を目指す人だった。
そのために打算的に行動する人でもあったけれど、彼のバイタリティーに私もたくさんの刺激を受けた。
縁故を頼りに入社して当時三年目だった私は自分のやりたいことが見つからず、希望していた訳でもない経理部の仕事に不満と閉塞感を抱いていた。
けれど奮起して税務の通信講座を受け始めたのは、寧史に“生き残る努力をしろ”と社会の厳しさを諭されたからだ。
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