婚約

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「聞くところによると、黒木君は近いうちに海外赴任の可能性が高いらしいんだな」 また下を向きかけていた私は、海外赴任と聞いてまた少し反応してしまった。 寧史が熱望していた海外赴任のポスト。 どうやらまた黒木が勝利するらしい。 黒木を敵視する習慣が身に染み付いてしまったせいで、寧史に裏切られた今でも黒木の勝利を悔しいと思ってしまう自分が情けない。 「それで早く身を固めさせたいってことで、この話が持ち上がったんだよ」 「あの…お聞きしたいのですが」 私が名指しされたいきさつが、どうも腑に落ちず気持ち悪い。 「さっき、是非私を…と仰いましたが、それはどなたが仰って下さったのでしょうか?」 黒木が私を知っているとも思えないし、知っていたとしても私に興味を持つとは思えない。 すると途端に部長の勢いが怪しくなった。 「それはその……海外プラント部の麻生部長だよ」 私も卑しいもので、いまだ寧史を思って泣き暮らしているというのに、指名元が黒木本人ではないと知って少しがっかりした。
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