Cafe Rose Corridor

3/9
前へ
/10ページ
次へ
 その日この店の扉を開いたのは、何ともこの店に似つかわしくない……否、ある意味とても似つかわしいかもしれない少女だった。  少女は、ふわふわの白いワンピースに身を包み、かなり大きめの白いリボンでピンクの長い髪をツインテールに結んでいる。  年の頃ならそう12、13歳程。  少女は扉を開けるなり、 「虹翼(コウヨク)!勿論無花果(イチジク)のタルトはあるんでしょうね」  そう叫びながら、ツカツカとカウンターの方へと進んだ。  そして、持っていたピンクの日傘の先を床に付き『ヨイショ』と少し高めの椅子に腰掛ける。  そこへ駈け寄って来たのは、いましがたこの少女に『虹翼』と呼ばれたウエイトレス。  この店の看板娘である。 「勿論ありますよ、マリさん。お飲み物は」 「珈琲。ブラックで……ミ」 「ミルク多目、ですよね」  全てを見透かしたようにそう言って微笑む虹翼。 『ミルク多目』は最早ブラックではないが……まぁ、その辺りには敢えて触れない。  何故ならそれは、いつもの事だから。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加