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「でも、この間マリさんが来たのって、3年位前ですよね。そりゃあ、私だって成長しますよ」
そう言われたマリは、何かを思い出すように上を見上げ、宙を仰ぐ。
そして、
「そうだったかしら?……まぁ、私にとっての3年なんてほんの束の間。此処へ来たのだって、つい昨日の事みたいだわさ。ホント愉快」
そう言って笑ったマリの前に、カウンターの向こう側から無花果のタルトが差し出される。
「今日は回収かい?マーリシス」
ニコリと笑ったマスターが、入れ立てのブラック珈琲に温かいミルクをたっぷりと注ぐ。
『マーリシス』どうやらそれがマリの本名らしい。
「そうだわね。これでようやっと卵を孵化させることが出来るわさ。幾ら私でも、50年は些か長かったわさ。ホント不愉快」
そう言いながらマーリシスは、今目の前に置かれたばかりのミルク入りブラック珈琲にそっと口を付けた。
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