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―50年前―
「その願い、私が叶えてあげるわさ」
とある病院の一室。
ベットの脇で必死で神に祈る母親に、私はそう言って声を掛けた。
「え?」
驚いたように顔を上げた母親は、辺りをキョロキョロと見回してから、
「あなた、一体いつから……」
と呟き私の顔を見上げた。
「神はアンタの願いを叶えないわさ。その証拠にほら、今此処には、アンタと私の他に、死神がいる」
私はそう言うと、母親の横に佇む黒いスーツに黒ネクタイ、黒い革靴を履いた黒ずくめの死神を指差した。
その瞬間、人間にも彼らが見えるよう簡単な呪文を唱える。
母親は自分の横に突如現れた黒い存在に驚き、思わず椅子から立ち上がった。
その姿に、浮かび上がった死神も驚き後退る。
「マーリシス!お前何やってんだよ」
そう言って生意気な声を上げた死神に、
「オダマリ!!!交渉中」
と、一喝すると、死神は呆れたように大きな溜め息を吐き、
「あと2分ちょっとだぞ……時間厳守な」
と言って、母親が座っていた椅子に腰を下ろす。
「分かってるわさ!あー不愉快。いいからちょっと黙ってるんだわさ」
私はそう言って死神を黙らせると、素早く交渉に入った。
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