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「聞いての通り、アンタの娘はあと2分で死ぬんだわさ」
私がそう言うと、母親はゆっくりと目を閉じ唇を噛んだ。
「でも、アンタが私と契約を交わせば、アンタの娘は助かる。そうだわね、私がその子にあと60年分の命をあげるわさ。そしたらアンタはその娘に最期を看取って貰える。どう愉快な話でしょ?」
私がそこまで言うと、
「ちゃんと条件話せよ」
と、母親の向こう側から死神の邪魔が入る。
「分かってるわさッ!今から話すわさ」
私はそう叫ぶと、再度母親の方に向き直り、
「条件はただ一つ。アンタの寿命が尽きた時、アンタの魂を私に頂戴。条件はたったのそれだけ。私と契約すれば、アンタはあと50年、娘と共に過ごせるんだわさ。ね、愉快な条件だわさ」
立ち尽くす母親の顔をジッと見上げ、どうする?と首を傾げる。
「あと、1分」
「五月蝿いわさ!」
死神のカウントダウンが私を苛立たせる。
「契約なんかしたら、輪廻出来なくなりますよ。止めた方がいい」
更にお節介な死神の声に、
「だから五月蝿いわさッ!!!」
と怒鳴った瞬間母親が、
「あなた……悪魔なの?」
と、そう呟いた。
「いいえ、私は魔女。私は私の娘の為に、人間の魂が欲しいの……ただ、それだけ」
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