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「そろそろ時間だわさ」
マーリシスはそう言うと、無花果タルトの最後一口を一気に頬張った。
そして、まだ口をモグモグとさせながら少し跳ねるようにして椅子から飛び降りた。
「ねぇマリさん、今度は赤ちゃんも連れてきてよ」
笑顔でそう言った虹翼に、
「無理だわさ。今度孵化するのは悪魔の娘だわさ。言う事なんて聞かないわさ」
と、マーリシスは眉間にシワを寄せ首を横に振った。
その時また、店の扉が開いた。
「いらっしゃいませ」
虹翼の元気な声が店内に響き渡る。
店に入って来た男は、迷うことなく店の一番奥の隅っこの席に腰を下ろした。
「あんなのも来るんだわね……全く、相変わらずだわさ」
マーリシスがそうポツリと呟くと、
「ちゃんと人間のお客様もみえますよ」
と、マスターは笑顔で答え、
「うちはね、来る者は拒まず。ルールさえ守ってくれたらそれでいい」
そう言いながら穏やかな時間の流れる店内をぐるりと見回した。
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