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雪虫、と言うのをご存知だろうか。
本当の名は知らない。
ただ、仇名として親しんで呼んでいた名称だ。
幼い頃、秋も深まり、もうすぐ初雪も見られるかと思われる時期に良く見た虫。
ふわふわと頼り無く、まるで風花の如く風に乗って飛ぶ小さな姿。
白い毛の様な物に覆われた身体は毛皮を纏っているみたいだが、その背に生える小さな翅に似つかわしくない程に着ぶくれても見える。
その雪の結晶みたいに白く小さな身体と薄く透ける翅。
冬近い頃に飛ぶ姿。
ふわりと舞う様は雪の化身の如く。
枯れた世界に、白い清楚な姿は目立って。
幼い頃は本当に雪の精霊が舞い降りた気がして、とても神秘的に感じていた。
小さい癖に白い姿は良く目立ち、雪虫が見られるともうすぐ初雪が降ると信じていたものだ。
少し大きくなってからは、あれは身体がカビているのだとか、蝋物質を分泌しているのだと聞いたが真相は知らない。
薄汚れた大人の知恵等、聞きたくも無かったから、興味薄くふうんと聞き流していた。
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