氷炎

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 一本の筈である道を間違えた。  行けども行けども、獣道に迷い込んだか、山小屋には辿り着けない。 「どうする? もう陽も暮れた」  互いにヘッドライトを点けてはいるが、予備の電池は無し。  心細さが募るから、その事は話題にしない。 「雪、増えて来たよね」  木陰に溶け残る新雪の量は、確かに増えて来ている。  山小屋の辺りは、軽く雪が積もっていると話を聞いたから、通り過ぎてはいない筈。  宵闇の中、吐く息は白く、装備の甘かった肌に寒さはしんしんと堪える。 「動かない方が良いだろうけれど、この寒さじゃな」 「どこか、風をしのげる所ないかな」 「もう少しだけ、行くか?」  頷き、ぽきりと目の前の小枝を進行方向に向かって折り曲げ、脚を踏み出す。  最悪は、この目印を逆に辿って戻れば良い。  問題は道に迷ったと気付くまで、この目印は付けていなかった事。  所詮、振り出しに戻るだ。
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