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「ごめんね」
小さく呟いた。
「ここ、冬は入っちゃいけない山なんだ。夏山登山しか許されていないの」
炎の中、舞い飛ぶ火の粉が煌めく色彩を変える。
青白く、キラキラと。
六辺の花弁を持つ雪の結晶へ。
それは、きらりきらりと舞い上がり、ゆっくりと降りて来る。
赤とオレンジに彩られていた筈の炎は、何時しか透明と銀の煌めく氷筍に。
ほだ木は氷柱へと変化した。
「見つかるのは、来年の春かな?」
肩に乗る彼の頭にそっと頬を付ける。
「ネットにね、この山の伝説が流れてた」
寝息は規則正しく、少しも乱れない。
「冬になるとね、嫉妬深い山姫様が目覚めて、迷い込む人間全てを凍てつかせて殺すんだって」
寝息に誘われ、目蓋が重くなる。
「君を、あの人になんか渡したくなかった」
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