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ゴンッと鈍い音が響き、レイが「いったぁ」と頭を抑えた。
「ほんと、ようしゃないよねぇ」
むううっと恨めしそうに、怒るシンを見つめながらボソリと抗議するレイ。
「おまえは、ほんっとに、」
深い深い溜息を吐くシン。たぶんイライラを逃しているんだろうなぁなんて思う。
シンは優しいからね。きっと全部許しちゃうんだよ。
「お前の両親に何て言えば良いんだ」
なんて頭を抱えそうになるシンを見て別に申し訳なさなんて感じないけど、ただ少しだけ可哀想だなと思う。
「シンは、犬だからね、」
ただし、俺の両親の。
そう言うと、ああ!?とチンピラみたいに凄まれる。
「……飼い主に、とても従順な、ね」
そんなことを言うレイに本気で怒ってやろうとレイに視線を合わすシン。
「おまえ、いい加減に……」
言葉は最後まで言えなかった。その漆黒の瞳の奥に、ふと、寂しさのようなものが見えたからだ。
シンは、もう一度息を吐き、夕食の準備をすべくキッチンへと向かう。
怒られるなと思ったレイは、怒らなかったシンをみて首を傾げた。
「おかしなモノでも食べたのかな」
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