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煌びやかなネオンが暗い夜の街を明るく染め上げ、男と女、そして様々な人種がさまよい歩いている。
幾つもの仮面を付け替えながら……。
もう、母親の背丈をゆうに越え、小さいながらも胸も出て来た。まだ幼さが消えぬものの髪を染め、覚えたての化粧で大人をも誤魔化す事が出来るようになった──。その夜の街を毎夜の如く徘徊し、私自身を傷付け壊して行く。
もう何度涙を流したのか忘れた。何度も何度も大人達に裏切られ、傷つけられたかも分からなくなっていた現在……。
私のこの身体は大人達に弄ばれ、心も身体は悲鳴を上げている。その様々な感情が毎夜駆け巡るものの、死んだように眠る僅かな時間だけが愛おしく思う。
『もう……良いかもね──。』
そんな台詞を呟くようになった私自身に、小さく笑うのだ。そして今日も大人達に弄ばれた部屋の片隅の窓際に座り、覚え立てのメンソールの煙草に火を点け、塵や埃で霞んだ夜空に浮かぶ円い月を眺めていた。
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