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それからしばらく弥生の頭を撫でていると、不意に俺の手が弥生の手に捕まれた。
ん?なんだ?さすがに撫ですぎたか?
それにしてもなんで男なのにコイツの手はこんなに柔らかいんだ……。
「そういえば飛鳥先輩」
……おかしい。なぜか寒気が……。
それと、俺の手が握り潰されそうなほどに痛いんだが。
「飛鳥先輩から、まるで空間移動したときのような空間の揺らぎを感じるんですけど…………」
そこまで聞いた瞬間、俺は今にも握り潰されそうな手を振りほどき、能力まで使って全力で逃げ出していた。
ヤッベェ。まさかバレるとは思わなかった。
なんだよ空間の揺らぎって。そんなもん対処のしようがねぇじゃねぇか。
ある程度離れた場所まで走ってきた俺は、能力を使うのをやめ少しずつスピードを緩めていく。
「とりあえずこれだけ離れれば…………」
惰性で動かしていた足を止めて立ち止まると後ろを振り向いた。
……よし、誰も居ないな。ふぅ、なんとか振り切っ
「どうして逃げるんですか?」
後ろから聞こえてきた声に、ギギギと音が付きそうな動きで振り向く。
「捕まえました」
振り向いた瞬間に正面から抱きつかれて完全に逃げ場を失った俺には、諦める以外の選択肢は無かった。
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