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 「弱い奴に用はない。」 邪魔なんだ、弱い奴は。 ロクに人も守れず、 護られるだけの存在。 …俺だって、最初からそういう考えを持ってたわけじゃない。 強いも弱いも関係ない。 ただ好きだった。 父さんが、母さんが、 妹(神楽)が。  「神威は優しい子ね。いつも神楽を守ってくれてありがとう。」 父さんは俺達の為にお金を稼ぎに滅多に家に帰ってこない。 母さんは病気で、あんまり無理をさせられない。 だったら、神楽は俺が守らなきゃ。 強くなって、強くなって、ずっと神楽を守り続けるんだ。  「えへへー、兄ちゃん、大好きアル!」  「俺も、大好きだよ。」 この無邪気な笑顔を曇らせたくないから。  「兄ちゃん!見て見て!パピーとマミーと兄ちゃん描いたアル!」  「へぇ、上手いね。将来は絵描きさんになる?…っとこれ神楽いないじゃん。ほら、描いてやるから貸してみな。」  「わーい!」 守るんだ、絶対に。 母さんの病気が悪化してきた。  「マミー…、死んじゃうの…?」  「…大丈夫、死なないよ、大丈夫。」 俺が守らなきゃ。 強くなって。 でも戦ってないからわからないや、だったら試せばいい。 夜兎には昔『親殺し』という風習があったんだから、問題ないよ。  「パピーやめて、兄ちゃん死んじゃうヨぉ…!」 完敗だった。 勝てなかった。 しまいには守るべき対象の神楽に助けられた。 …ダメだ、もっと強くならないと。 もっともっと。 強くなるには、弱さを捨てなきゃ。  「失せろ、俺は、弱い奴に用はない。」
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