5人が本棚に入れています
本棚に追加
「弱い奴に用はない。」
邪魔なんだ、弱い奴は。
ロクに人も守れず、
護られるだけの存在。
…俺だって、最初からそういう考えを持ってたわけじゃない。
強いも弱いも関係ない。
ただ好きだった。
父さんが、母さんが、
妹(神楽)が。
「神威は優しい子ね。いつも神楽を守ってくれてありがとう。」
父さんは俺達の為にお金を稼ぎに滅多に家に帰ってこない。
母さんは病気で、あんまり無理をさせられない。
だったら、神楽は俺が守らなきゃ。
強くなって、強くなって、ずっと神楽を守り続けるんだ。
「えへへー、兄ちゃん、大好きアル!」
「俺も、大好きだよ。」
この無邪気な笑顔を曇らせたくないから。
「兄ちゃん!見て見て!パピーとマミーと兄ちゃん描いたアル!」
「へぇ、上手いね。将来は絵描きさんになる?…っとこれ神楽いないじゃん。ほら、描いてやるから貸してみな。」
「わーい!」
守るんだ、絶対に。
母さんの病気が悪化してきた。
「マミー…、死んじゃうの…?」
「…大丈夫、死なないよ、大丈夫。」
俺が守らなきゃ。
強くなって。
でも戦ってないからわからないや、だったら試せばいい。
夜兎には昔『親殺し』という風習があったんだから、問題ないよ。
「パピーやめて、兄ちゃん死んじゃうヨぉ…!」
完敗だった。
勝てなかった。
しまいには守るべき対象の神楽に助けられた。
…ダメだ、もっと強くならないと。
もっともっと。
強くなるには、弱さを捨てなきゃ。
「失せろ、俺は、弱い奴に用はない。」
最初のコメントを投稿しよう!