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俺が早乙女の人間になったのは、まだ10歳にも満たない子供の時。
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小学校に上がってすぐ母親に捨てられた俺は、施設で暮らしていた。
物心ついてから捨てられたことで、ショックは消えず、何度も自ら命を絶とうとした。
その度、病院に運ばれ、2日もしないうちに目を覚ます。
お袋さん(施設のお母さん)は困った顔で俺の頭を撫でた。
施設に帰れば他の子たちにはさげすんだ目で見られた。
自分がいれば迷惑がかかる。
俺には居場所がないんだと常日頃から思っていた。
次第に学校へは行かなくなり、施設にも居辛くなって、雪の舞う冬の、ある寒い夜、俺は施設を飛び出した。
お金なんて持ってない。
寒さを凌ぐための防寒着なんてたかが知れてる。
―生きてる意味なんてない―
頭にはこの言葉しか無いかのようにそれしか考えられなかった。
歩き疲れて壁にもたれかかり地面に膝を抱えて座ると、瞼はゆっくりと下りてくる。
―このまま目を閉じればきっと―
そんなことが頭をかすめた時、雪と一緒に声が降ってきた。
優しくて柔らかくて。
でも、すぐに消えてしまいそうな。
雪のような声。
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