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「暗くて何も見えないね……」
「そうですね……。何が出てくるかも分からないし、罠とかあるかもしれないので気を付けてくださいね?」
暗くて長い道を手を壁に付けながら歩いていく。
辛うじて道幅が狭いので声や足音で茉夸ちゃんの位置を把握する事が出来る。
「どこまで続くんだろ……。せめて灯りがあればいいんだけど……」
「あ、鈴歌さん、あそこ……!」
ずっと遠くの方に小さな灯りが見える。
「行ってみよう!」
嬉しさのあまり走り出す。
早くあの灯りの下に行きたい。
「鈴歌さん!待ってください!慎重に行った方が……!!」
そんな声も耳に入らない。
あと少し。あと少し。
だんだんその距離が縮まってきた所で何かが足に引っ掛かり、顔面から盛大に転ぶ。
「うぅ~……。イタタ………」
「大丈夫ですか!?すごい音しましたよ?」
灯りが近いからか、駆け寄ってくる茉夸ちゃんの姿がうっすらと分かる。
「大丈夫!よくある事だから!それより見て!扉があるよ」
蝋燭の火に照らされたそこには頑丈そうな鉄の扉。
「開けてみようか!」
「待ってください。何か違和感を感じませんか?」
茉夸ちゃんに言われて初めて気付く。
確かに何か変だ。
「あ…。取っ手がないです」
「本当だ!」
確かにない。
このままじゃ、扉は開けられない。
「どうしよう……。入り口からここまで一本道だったよね?」
来た道に目を向ける。
「……あれ?」
来た道はこっちの方ではなかったのか、そこにはただの壁しかない。
周りを見渡しても道は無く、壁しかない。
「どうやら、来た道は消えてしまったみたいですね……」
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