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鬼となった子どもの解散の合図とともに移動し始めるとチュニカがちるに声をかけた。
「ちるさん、どちらが缶を先に蹴れるか勝負しませんか?」
「勝負ですかー? いいですね、やりましょうー」
頷きあうと缶けりの始まりが告げられた。
―――
――
―
鬼が缶から背を向けて少し離れたとき、鬼ではなかったもう一人の子どもが物陰から飛び出す。
が、
――ぽんっ
「さくらちゃん、つっかまーえたっ!」
もう少しで蹴るというところで待っていたかのように缶を踏みつけ、鬼となった子どもは捕獲宣言をした。
「どこにいるかわからなかったけどいるのはわかっていたんだ!」
と得意げに胸をはる。
「ちるちゃん、チュニカちゃんどこだろ」
そう言ってきょろきょろと周りを見つつ、すんすんと匂いを探る。そのまま匂いに集中し始めた。
「ちるちゃんはあっちかな」
***
一方、ちるは始めは普通に建物の影に隠れていたのだがさくらが捕まったときに思わず飛んでしまい現在、屋根の上から様子見である。
「少し困りましたー。チュニカさんはどこにいるんでしょうかー?」
とりあえず、上から見下ろすことができる場所には見つけられずにいる。缶けりとして勝つのはもちろん、チュニカとの勝負に勝つためにはこの場所から降りて蹴らなくてはならない。飛んで近くまで行けたらいいが影で気付かれる。ちるがどうしたものかと悩んでいる間、時を同じくして、チュニカも悩んでいた。
――どうしたら、缶のあった場所に戻れるのか、と。
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