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でも、そうだよね。
どおりで変すぎると思った。
あれは、全部、試験の延長だったわけだ。
「それじゃあ、これから普通になってくれるんですよね?」
と香苗は確認するように谷口を見る。
「さぁ、僕達はノリが良すぎるから」
そう言って首を傾げる谷口に、
「もう、なんですかそれ」
香苗は、顔をしかめたあと、笑みを見せた。
呆れつつも平凡ないつもの毎日に素敵なスパイスが加わったことを感じ、香苗は、ふっと頬を緩めた。
――新田香苗、22歳。
そこそこのゲーム会社で、ごく普通の事務をしつつ、実は社内の秘密組織に属しているスパイだ。
昼は事務員、就業後はスパイ、なんて、そんなカッコいいものでは全然ない。
かなり怪しいし、どうせ、これからも大した任務はないのだろうけど、
居心地は悪くないから、いいことにしよう。
香苗はそんなことを思い、朝焼けの空を仰いで、笑みを浮かべた。
■気がつけば私、スパイ
TheEND
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