1.奇妙な一日

16/16
3223人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
「一度誰かに打ち明けたかったんだ。言ってスッキリしたよ。ああ、重い荷物を手放した気分だ……」 谷口は両手を広げ、天井を仰ぎながら、清々しそうに言う。 「…………」 一方の香苗は、またも何も言えない。 「でも、今はまだ誰にも知られたくないから、黙っていてくれないか」 谷口はメガネの奥の目を光らせて、香苗を見た。 「え、あ、はい。分かりました」 面倒なことに巻き込まれるのはごめんだ。口外する気はない。 「ありがとう、それじゃあ準備がんばって」 谷口は片手を上げて、颯爽と会議室を出て行く。 「……一体なんなの」 一度ならず二度までも。 そして二度あることは、三度あるとはよく言ったものだ。 無理やり重い荷物を背負わされた気分になり、香苗は額に手を当てた。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!