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――そんな奇妙な一日を終えた香苗は、夕陽を眺めながら、まったくなんて一日だったんだろう、と息をついた。
一度に三つの秘密を訊いてしまった。
重いものを背負ったような気持ちにはなったが、誰かにこっそり話す気にはならなかった。
ゴシップ性の高い話だ。
誰かにこっそり打ち明けたら、大いに盛り上がるだろう。
だが、香苗自身、噂話を嫌っていたし、あられもない噂話しに花を咲かせる輩を好きにはなれず、いつも噂話しに合わせる振りはしていても一緒になって話すことは決してなかった。
「長い人生、こんな日もあるよね」
たぶん、と香苗が自分に言い聞かせていると、今まで心地よかった空気が少し冷たくなってきていることを感じ、ぶるる、と身を小さくさせて自分の体を抱き締めた。
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