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「なんだったんだろ、今日は……」
ぽつりと洩らすも頭の中の疑問符が消えるわけではない。
まぁ、いいか、と息を吐き出す。
「帰ろっかな」
就業時間は、既に過ぎている。
あと少し雑務をしてから帰ろうと思った時、窓から広がる美しい夕陽が目に入り、ふと屋上に上がる気持ちになったのだ。
屋上に来て正解だった。
いつも見上げる味気のない都会の空が水色からピンク、そしてオレンジへと移り変わるグラデーションが完璧なほど美しく、まるで現実のものではない美しい絵か写真を見ているような気持ちになる。
現実とは思えない景色もあれば、出来事もあるのだろう。
香苗は遠い目で、今日一日を振り返った。
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