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そろそろ本当に帰ろうか、振り返ると、この屋上の片隅に秘書課の部長が膝を抱えて座っている姿が目に入り香苗はギョッとして、身を反らせた。
「部長、いつの間に?」
秘書課の部長は少し太めで温和な雰囲気を持つ、ごく普通の中年男性だった。
部長は体育座りをした状態のまま、少し顔を上げて、「やあ、お疲れ様」と力ない笑みを浮かべた。
「……お疲れ様です」
なんだか関わらない方が良さそうだ。絶対に。
四度目の正直には関わりたくない。
これ以上の会話は避けよう。
香苗は会釈をして、屋上を後にしようとすると、
「私は今日限りでクビになりそうだ」
部長はうな垂れたまま、ぽつりとつぶやいた。
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