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――その後、香苗は自分の中に沸きあがる理不尽な怒りを抱えつつ、非常階段を出て、ズンズン歩いていると、
給湯室でキャイキャイと女性社員が楽しげに語らっている声が耳に届いた。
「でね、新田さんと篠原さんが付き合ってるみたいなの」
「マジで? 篠原さん、イケメンだから狙ってたのにぃ! 今日の今川さんの送別会で親しくなろうと思ってたのにぃ!」
うわ、さすが、電光石火。
まさかの自分の噂であることに、しまった、と額に手を当てた時、
「今川さんと言えば意外だよね。私、今川さんはずっと、谷口さんが好きなんだと思ってたの」
続いて聞こえて来た、その言葉に香苗は「え?」と動きを止めて、気付かれぬように給湯室入口に近付いた。
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