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早歩きで修練室を出て、あてもなくとりあえず屋上に行く。
いらいらしている理由はわかる。
しかし、いらついているその理由がくだらなすぎて、自分が嫌になる。
なぜ命令という隠したい能力を使ってまで助ける? 俺を助けたってあいつにはなにもメリットはない。
優しいんだよ、どんだけ突き放したって……俺があいつに手をあげたことがあっても、あいつが俺に手をあげあことは一度も……。
もう嫌だ。
どうして同じクラスになった?
お互い傷つくだけじゃないか……。
「トラン、ここにいたのか」
サミドが屋上に入ってきて、柵に寄りかかっている俺の隣に同じように寄りかかった。
「サミド……ダンともう関わりたくない」
「なぜ? ダンが嫌いだから?」
きっとわかってそう言っているのだから、サミドも意地悪な奴だ。
「俺とあいつはもう、一緒にいても元のようには戻れねぇよ。俺は魔物が嫌いだ。魔物を好いているあいつの気持ちはわからねぇ」
「別にいいじゃないか。好き嫌いが違ったって」
サミドにそう言われて、拳をぎゅっと握る。
「サミドは知ってんだろ。俺があいつを突き放すようになった理由」
「嫉妬、だろう?」
「…………子供だよな、俺も……」
「難しいよな。子供だったお前が気持ちに折り合いをつけるのは」
ぽんぽんと頭に手を置かれ、首をすくめる。
「でも、今なら……相手の気持ちも理解できるようになった今なら、折り合いをつけられるだろう。この誰も得しない九年間の喧嘩、いつまで続けるんだ?」
「今更……ダンは俺のことなんてなんも思っちゃいねぇよ」
「……どうだか」
サミドは頭に置いた手をおろして、微笑んだ。
「ただのすれ違いだよ」
そう言い残して、サミドは屋上を去っていった。
「すれ違い……そんな一言ですますんじゃねぇよ」
呟いて、空を見上げる。雲一つない青空に目を細めて、ふととあることを思い出した。
「……そういや、今日は流星群……だったか」
『いつまでも孤児院のみんなと仲良くいられますように!』
思い出してしまったダンとの出来事にため息が漏れる。
「あいつの今の願いは何だろうな……」
俺は、あの時とは少し違う。
でも本質は変わらない。
「ダンとーーーー」
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