【2.二流作家はやはり一流思考は理解し難い】

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「ちゃんと来てくれたのね。上出来よ。」 つい先日聞いたばかりの声だ。 振り返るまでもなく声の主が誰なのかは俺には分かっていた。 「あっ……、中御門さん。おはよー!」 秋江の視線が中御門へ移る。 彼女が中御門へ声をかけたところで、俺も中御門へ視線を向ける。 「お早う、秋江さん。」 その挨拶から二人は軽く会話を交える。 どうやら、二人はある程度は話せる仲のようだ。 「そうそうスガちゃん、冬休み明けにクラスにきた転校生の中御門 千夏さんだよ。」 秋江が中御門を紹介すると、中御門は他人行儀に軽く頭を下げて言った。 「宜しく、春日井 亜戯斗君。」 「……ああ。」 こいつ……さも初対面みたいな顔してやがる。 「あ、あれ?私まだスガちゃんのこと紹介してないけど……中御門さんは知ってるの?」 秋江が不自然な点に気付いたようだ。 確かに、言われてみればその通りである。 端から見れば、俺と中御門は初対面のはずだ。だが、現在では俺も中御門も既にお互い面識がある。 「昨日、ちょっとした用事で春日井君と顔を合わせる機会があったの。 それで、少し話をね……」 「そっかぁ……。ん?でも昨日のスガちゃんの用事って―――」 中御門は戸惑うことなくはっきりと事実を告げた。 だがまずい、先日の俺の用事といえば、スターノベルスに呼び出された事だけだ。 今、秋江に打ち切りの話を知られる訳にはいかない。
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