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その時、クラスメートが集団の中から誰かが秋江の名を呼んだ。
どうやら、秋江が持ち場を離れている間に仕事が入ってきたのだろう。
「あっ、ごめん!あたし行かなきゃ。
それじゃ、またねースガちゃん、中御門さん。」
「おう。」
「ええ、また後で。」
俺は軽く頷き、中御門は小さく手を振って応えた。
それを見てから秋江はパタパタと急ぎ足で駆けて行った。
残された俺と中御門は互いに目を合わせることもなく口を開いた。
「単刀直入に言うけどな、秋江にあまり執筆に関わることは言うな。
もっと深く言えば、打ち切りのことは絶対に言うな。」
自然と、俺は鋭い口調になっていた。
先日の会話の時にはこんな口調では話さなかった。
そのためか、驚きかはたまた興味が生まれたのか、その真意を探るように中御門は静かに俺に尋ねた。
「それは何故?」
至極真っ当な問いだ。
今度は普段の口調に戻ったまま返答する。
「もし打ち切りになったのを知られたら、俺はまた学校をやすまなくちゃならない。そうすれば、またあいつに―――」
言いかけたところで、俺の視界に中御門の姿が映る。
俺の前に立つ中御門は、まるで睨みつけているかのように目を細めていた。
「呆れた……。まともな教養もないのに簡単に一流作家などになれるわけがないじゃない。打ち切られるたのは当然の結果よ。それと……あなたがそこまでして学校を避けている理由は何?」
「聞くな。……教える気なんてない。」
俺はそう一言答えて体を起こした。
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