【1.二流作家は当然一流作家への夢を見る】

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だが、答えたのは麻戸さんではなかった。 「知らないのも無理ないわ。私がこの『スターノベルス』の創設者である中御門 (なかみかど ちなつ)よ。 県立楽燕高等学園普通科二年A組の春日井 亜戯斗君。 ……でもあなたには、作家『白百合 愛彩(しらゆり あいさ)』と言った方が分かり易いかしら。」 「なっ……嘘だろ……!?」 白百合 愛彩。 ここスターノベルス所属の作家なら知る人ぞ知る看板作家だ。 彼女は学園恋愛もの『蒼天ノベル』で500万部超えの記録を叩き出した超一流の作家なのだ。 さらに、その有名作家がスターノベルスの創設者であるというのも驚きである……しかも、女子高生でありながら、だ。 「―――それで、何で一流作家様が俺のところへ?」 「人の話を聞いてた?それとも記憶力がないの?あなたのその作品の打ち切りを命じたのが、この私だと言っているのだけれど。」 何だと……。って、そう言えばそんな話だったな。あまりの衝撃で中身スッカスカで聞き流してたぞ。中御門からしてみれば俺は頭スッカスカとも言われたんだけど。 「そうだったな……。そういや特典うんぬんとかも聞いたな。どういう意味だ?金一封でもくれるのか?」 特典と聞く分、真っ先に頭に浮かぶのは現金or金券ってとこがもう金銭感覚がしっかりしてるって感じ、生活感にじみ出てる!ホント、ちゃっかりしてるよね!決して、意地汚いとは言っちゃだめだよ! 「金銭やりとりはトラブルの元じゃない。残念だけど、そういったものではないわ。言うなれば、あなたのような新人……いいえ、『二流作家』に一流への道へと導くものよ。」 中御門は自信ありげな様子でふっと微笑む。 打ち切り直後なのに、まさかの特典……。 何コレ、ひょっとしてコネ的なものでいきなり待遇が変わったりとかしちゃうのだろうか。 俺が期待の眼差しで創設者様々、一流作家様々である中御門を見る。 対する中御門は急に厳しい声音になり、スビシッと俺を指差して言った。
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