【1.二流作家は当然一流作家への夢を見る】

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「これから高校卒業までの約二年間、あなたには私を超える作家になってもらうために、私があなたの執筆指導を受け持ちます。」 唐突な発言と、何とも身勝手なもの言いに俺は絶句した。 極端かもしれないが、つまりは中御門の指導は俺の作品のストーリーが彼女にとって気にくわないものであれば、指導と称しまるっきり構想が書き換えられてもおかしくない。 やだ、俺ゴーストライター化しちゃうよ。 これはアレだな、社畜ならぬ家畜ってやつだ。 作『家』だけに。 ……全然うまいこと言えてねぇな。 ここはしっかりと彼女に言っておくべきだろう。 「いやいや、指導なんて堅苦しいし。むしろ、邪魔になるだろ。俺はユーモアに満ち溢れた作品を書きたいんだ。悪いが、助言は必要ねぇよ。」 俺にしてはかなり上からな物言いだが、理由らしいような断り文句を並べ、中御門に牽制する。 対する中御門は、俺の発言から畳みかけるように反駁した。 「あなた、著作権侵害で一度訴えられているわね。ここじゃなく別の出版社にいた時だけど。」 「なぜ知ってる……!?あ、あれはだな、モデルにしたら多少似通っただけだ! 結局、追究してきた側の過度な疑いってことで治まったから関係ないだろ。」 「モデルだなんて……、ユーモアを強調する作家には不要ではないかしら?」 「うぐっ……!!」 俺は思わず言葉に詰まってしまう……言い返せない。 だが、他にも否定の余地はある。 フハハ、俺は粘り強いのが唯一の自信なのだよ!……この場合には単にウザいだけか。
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