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このタイミングで意識が戻らないことを
必死に祈りつつ、
肌には決して触れぬように
捲れ上がったスカートを整えた。
「大丈夫ですか?」
「救急車を呼びますか?」
今見たものをなかったことにし、
OLに向かって声を掛ける。
気付かれていない。
いや、意識がないんだ。
慌てて救急車を呼ぶ。
同時に先程荷物を届けたお宅を訪ね
908号室の女性が倒れたことを伝えて、
908号室の女性の年齢や
何か持病があるかとか
そんな情報はないかどうかを聞いてみる。
しかしここはマンション。
「ごめんなさい」
「確か20代のOLさんだとは思うけど
持病のことまでは聞いてないわ」
ご近所付き合いなんてこんなものだ。
それでも在宅していた
9階の住人たちは集まってくれ、
救急車が到着するまでの間
救急隊員の支持を仰いで
それぞれの家からタオルを持ち寄り
頭を高くしたりと
救護を手伝ってくれた。
配達の仕事のことは気になったが、
事務所に事情を伝え
救急車に908号室の彼女が乗せられるのを
俺も一緒に見送らせてもらった。
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