始まりは秋

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横田さんは無言でスタスタと前を歩いていく。どこか怒ってる雰囲気を感じる。授業抜け出させやがってみたいな感じかな。だとしたら申し訳ない。 「何でさっき机に頭をぶつけたの?」 視線を合わせずに前を向きながら会話をとばされた。声に温かみを感じない、さっきのあの子はどこ行っちゃったんだろ。まるで脅迫されてるような緊迫感がある。 「あー…思い出し笑いみたいに顔がにやけそうだったから頭を打ち付けたんだ」 本人を目の前にしてあなたのことを考えて顔がにやけてました、なんてこと言えるわけない。いくらかの誤魔化しはあったとはいえ嘘ではない。 告げると横田さんはくるりと回って目をじっと見つめてくる。その目は、まるで私には嘘は通じないよと釘を刺されてるようで照れてる場合ではなかった。 「笑いを取るためにやったかと思ったよ。そしたら説教だよ説教」 これだから筒井くんは。と一つ愚痴をこぼして、さっきよりもゆっくり歩いてくれる。…こんな他人のことで真剣に怒れる人ってそうはいない。 「…優しいよな、ほんと」 「優しいとかじゃなくてさ、身体は大事だよ」 やっと見せた笑顔は苦笑だったが、それでも居心地をよく感じた
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