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俺の言葉に反応するように触手がフルフルと震える。
俺は、グッタリと海の底に横たわったままのクラーケンを見て言った。
『なあ。このままだと、こいつ危ないよな。どっか安全な場所が有るか?』
俺がそう言った時、離れた場所に有った大きな気配が近づいて来た。
そして、ゆっくりと俺の前に泳いで来ると頭を下げるようにしたのは、大きな蛇。
所謂海蛇とでも言うか、そう言った種族だ。
俺はそいつを見つめた。
『安全な場所に案内してくれるのか?』
俺の言葉に嬉しそうに頭を上下に振る海蛇。
『判った。案内してくれ』
そう言ってから、俺は姿を本来の龍の姿に戻す。
小さな1mも無かった俺の大きさは半年余りで、2mはゆうに越えた。
クラーケンの身体を掴んで、海蛇の後を追って泳ぐ。
小さな身体で軽々と自分よりも遥かに大きな生き物を引いて泳げる自分の能力にちょっと、驚くな。
そのまま暫く泳ぐと、海溝が見えてきて、そこに洞窟があった。
海蛇はそこに向かってるようだ。
そのまま中に入るとその洞窟は広く深いもので暫く行くと一度沈んで上に向かっていた。
そして、何と奥には空気が有った。
俺は驚いてその中を確認した。
すると、そこには海蛇の卵があった。
俺は驚きに目を見張る。
「な!此処はお前達の産卵場所なのか?良いのか?こんな所を教えて!」
思わず声を出すと大きく響きちょっと、驚いた。
海蛇はニイっと口元を吊り上げるようにして、目を細めると頷く。
『坊やの事は信頼してるってさ。クラーケンも、坊やが襲うなと言えば絶対に襲わないのは判ってるし、坊やの望みは叶えたいんだって。優しいわね』
そう言って飛び回る精霊に、頷いて俺は言った。
『判った。ありがとな。クラーケン。お前も動けるようになったら、此処から出ろよ?
無理はしなくて良いからな?』
俺の言葉にクラーケンは、弱々しく触手を動かす。
身体は完全に治療をしてる。ゆっくり休めば直ぐに回復するのは判ってるからな。
こう言う所は魔物は強いんだよな。
俺は、ヒョイっと水から上がって卵に近づいて見た。
幾つかの卵が有って、そこは何故か地面が暖かい。
火山が近いのかな。地熱で卵を暖めてるのか。
うまいことやってんだ。
俺は感心して地面に手を触れて確認する。
それから立ち上がって、再び水に飛び込むと言った。
「じゃあな。元気でな」
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