港町 クラートス

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ああ。水面に居たはずの俺が何故見えるかって? 完全に気配も魔力も全て消して、とっくに船の上に上がってるからさ。 きっと、誰にも気づかれない。 周囲を完全に精霊達が覆ってるから。 これは、精霊を感じ取れて見る事が出来る者にも感じ取れないらしい。 力を凝縮して空気に溶け込んでるので、空気と同じに感じるんだって。 勿論、中にいる俺も完全に自分で気配や魔力を遮断してないと無理だけどな。 俺は、船の縁に座って様子を見ている。 「皆さんは本当に素晴らしく賢いですね。喜ばしい事ですよ。では、迎えの船を此方に手配しますので少しの間ここでお待ち下さいね」 そう言って教祖はフードを被ると、右手を上げた。 それと同時にずっと、空中で待っていた神龍が降りてきて首を下げる。 教祖はその頭を撫でると背中に乗って、言った。 「さ。参りましょう」 神龍はそのまま飛び上がって、何処かに飛んで行ってしまった。 俺は、最後に教祖が聞こえないように小さく呟いた音を拾っていた。 「・・・・・・馬鹿共が簡単に騙される。屑め。馬鹿龍。行くぞ」 俺は、思いっきり眉を寄せていた。 確かに、あの龍は大きく立派だった。 だが、目に光は無く額の宝玉?光り方がおかしい気がした。 中心部分が真っ黒な気がした。 なんだろ・・・・・・あの宝玉。気持ち悪い。 俺がそう思ってると、精霊が言った。 『あれは、宝玉じゃないわ。魔道具よ』 『そうね。魔道具だわ。洗脳用のね』 洗脳?! 俺は驚いて精霊達を見た。 精霊達は、俺を見て頷く。 『間違いないわ。見て確信したわ。あれは洗脳の魔道具よ。龍を完全に洗脳して操ってるわ』 『でなければ、誇り高い龍が人間になんか従う訳がないじゃないの!』 そう言って怒る精霊達。 なるほど。洗脳か。あの石を壊せば、元に戻るのか? 俺がそう思うと、精霊達は悲痛な表情になった。 『判らないわ。長い間、ああいう状態だった場合、元に戻れるかどうかは半々?いや、もっと低いと思って良いわね。戻れないどころか、壊せば彼の精神状態が破壊されてしまう可能性も有るわ』 その言葉に頷く他の精霊達。俺は、眉を寄せる。それは、苦しいよな。本当に。だが、同じ龍として思う。 自分の意思を無視して無理矢理操られる。これは苦痛だ。そんな状態のまま生きる位なら、死を選ぶと思う。
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